用語集
相場最終更新 2026-10-12

USDA豚生体相場

USDA Hog Prices — 生体豚の実取引価格レポート

米国では、生産者とパッカーの間で実際に成立した生体豚の取引価格を、USDA(米国農務省)が集計し、毎営業日公表している。卸売市場のセリ値ではなく、法律に基づいて毎日報告される直接取引のデータであり、米国内の豚の生産・販売の97%をカバーする。CME Lean Hog 先物の決済に使う現物指数も、ここから算出される。

同じ生体豚の価格でも測り方の違う指標が数多く公表されており、業界での注目度には強弱がある。

全体像 — どの数字を見ればいいか

業界で最もよく見られているのは、CME の Lean Hog 先物である。現物の生体相場で基本になるのは、の正味価格。その日のうちに動きをつかみたいときは、の相対交渉価格で補う。

どの数字がどのレポートに載るか — 全体図
軸①(いつ測るか)でレポートが2系統に分かれ、と畜側(HG201)だけに正味価格が載る
図は左右に動かせる
① 購買時点買い付けた日で数える① と畜時点と畜した日で数える当日速報(HG216/217)相対交渉のみ・ベース価格前日確報(HG218)契約形態別・ベース価格のみ前日確報(HG201)ベース価格 + 正味価格生産者販売 52.4%契約形態別に価格公表パッカー間販売 7.1%全形態の合算のみ自社保有豚 40.5%価格なし・頭数のみ相対交渉0.9%価格発見の起点相対交渉フォーミュラ 0.1%現物市場連動27.7%取引量の主流その他市場連動6.3%その他契約17.4%CME Lean Hog Index正味価格の2日加重平均① いつ測るか日次レポート② 誰から仕入れた豚か(HG201 の内訳)③ どう値決めしたか(生産者販売の内訳)現物指数(先物の決済基準)

図中の枠をクリックすると、下の説明が切り替わる

前日確報(と畜)LM_HG201

前日にと畜された豚の確報。ベース価格に加えて正味価格と枝肉スペックが載り、誰から仕入れた豚かの区分別にも分かれる。現物の生体相場で基本になるのは、この正味価格。→「誰から仕入れた豚か」

%はいずれも全と畜頭数比(2026年 年初来、週次レポート LM_HG214 の集計)。購買側(HG218)にも生産者販売・パッカー間販売の内訳があるが、業界が最も参照する価格はと畜側のため、図ではと畜側のみ展開した。

数字の出どころ

法律によりパッカーからUSDAへの報告が義務付けられている

報告義務を負うのは、直前5年の平均と畜実績が年10万頭以上の連邦検査プラント。米国のと畜豚の97%をカバーする(※2025年公表の USDA 予算資料時点)。

1990年代の米国では、パッカーの寡占化と垂直統合が進んだことで、公開の場で価格が付く取引が減っていった。相場連動のフォーミュラ契約が広がる一方、自主報告ベースの統計で捕捉できたのは豚の取引の75%程度にとどまっていた。

直接の引き金は1998年秋の豚価暴落である。供給過剰で相対取引の生体豚価格が歴史的な低水準に沈む一方、一部生産者のフォーミュラ契約価格は同じようには下落せず、「実勢が見えない」という生産者の不満が立法につながった。翌1999年に報告を義務化する Livestock Mandatory Reporting Act が成立、2001年から施行された。

前日の取引が翌日に公表される

木曜取引
金曜の朝報告
金曜集計・公表
金曜〜参照

図中の枠をクリックすると、下の説明が切り替わる

集計・公表USDA・時刻は米中部時間
  • 8時前日に買い付けた分の確報LM_HG218報告は7時まで
  • 10時前日にと畜した分LM_HG201報告は9時まで。正味価格はここに載る
  • 11時当日朝までの買い付けの速報LM_HG216報告は10時まで
  • 15時当日午後までの買い付けの速報LM_HG217、前日と畜分の正味価格の分布LM_HG215報告は14時まで
  • 毎週月曜週次のまとめLM_HG214
図:生体豚の取引から公表までの流れ(毎営業日くり返す)。時刻は米中部時間で、報告の締切と公表の時刻は LMR の規則(7 CFR Part 59)の定め。

たとえば木曜に成立した取引は金曜朝に報告され、金曜のうちに公表される。取引当事者でなくても、米国の生体豚がいくらで取引されたかを翌日には把握できる。この透明性が制度の目的である。

地域区分は全国(National)のほか、アイオワ・ミネソタ、西部コーンベルト、東部コーンベルトの3地域。全国集計にはカナダから搬入された豚も含まれる。

※ 母豚・雄豚は別レポート(LM_HG234)。いずれも USDA のサイトで無料公開されている。

いつ測るか — 購買データとと畜データ

レポートは「その日に買い付けられた豚」(購買データ)と「その日に実際にと畜された豚」(と畜データ)の2系統に分かれる。

単価の付け方は、生体重量建てと枝肉重量建ての2通り

いずれも生体豚の取引価格で、違いはどちらの重量に単価を付けて契約するかにある。生体重量建て(Live basis)の契約では、納入時に計量した生体重量に契約単価を掛けて支払額が決まる。枝肉重量建て(Carcass basis)の契約では、と畜後に計測した枝肉重量にベース単価を掛けて支払額が決まる。

つまり、枝肉重量建てと言っても、枝肉が流通する段階の価格ではなく、あくまで農家とパッカー間の生体豚の取引単価である(→ 混同しやすい点)。

生体重量建てLive basis
契約

単価 70ドル/cwt(生体)で契約

納入時に計量
生体の豚
285 lb2.85 cwt

生体重量 285ポンド(2.85 cwt)

支払

70 × 2.85 ≒ 200ドル/頭

と畜前に金額が確定

枝肉重量建てCarcass basis
契約

ベース単価 93ドル/cwt(枝肉)で契約

と畜後に計測
枝肉(半丸)
215 lb2.15 cwt

枝肉重量 215ポンド(2.15 cwt・歩留まり 約75%)

支払

93 × 2.15 ≒ 200ドル/頭

多くの契約で、品質のプレミアム/ディスカウントを加減算

歩留まりのブレや体についた泥などを除けず、赤身や脂肪の差も値段に反映できない。パッカーに不利。

枝肉を測ってから値段を決めるので、歩留まりや赤身・脂肪の差を反映できる。

2つの契約の流れ(数値は例)。1つの取引はどちらか一方の基準で契約され、単価の水準が違って見えるのは単価を掛ける重量が違うため。品質の加減算は多くの契約での慣習で、加減算後の金額が正味価格になる。豚と枝肉の絵は AI 生成のイメージ。

同水準の豚なら1頭あたりの支払額はほぼ同じだが、枝肉重量は生体重量の約75%のため、枝肉建ての単価は生体建てより概ね3割ほど高い。基準は取引ごとにどちらか一方。

実際の取引は殆どすべて枝肉重量建て

1980年には米国の8%だったが、1999年には75%に達し、今では99.8%とほとんど全て。(生体重量建ては週間と畜約184万頭のうち4千頭あまり)

米国の報道では、先物(futures)に対して現物を cash hogs と書くことが多く、その価格も枝肉重量建ての単価である。

枝肉の品質等でさらに調整を加えて、正味の支払額が決まる

実際の取引では、ベース価格に品質に応じたプレミアムやディスカウントを加減算して最終価格を決める(→ 参考)。

  • ベース価格(Base Price) — プレミアム・ディスカウント適用前の基準価格。市況そのものの水準を見る数字。
  • 正味価格(Net Price) — 全プレミアムを加え、全ディスカウントを引いた後の、パッカーが生産者に実際に支払った金額。

正味価格は枝肉測定後に決まるため、前日と畜レポート(LM_HG201)にのみ載る。

誰から仕入れた豚か — パッカー保有豚の価格は統計に現れない

  • 生産者販売(Producer Sold) — 独立生産者からパッカーへの販売。契約形態別に価格が公表される。
  • パッカー間販売(Packer Sold) — パッカーが自社所有していた豚を他のパッカーへ販売したもの。全契約形態の合算で公表される。
  • パッカー自社保有豚(Packer Owned) — パッカーまたはその子会社が、と畜前14日以上にわたり所有していた豚。垂直統合された内部供給であり、市場での売買を伴わないため、取引価格は報告されない。公表対象は頭数と枝肉スペックのみ。

パッカー自社保有豚は、米国のと畜頭数の約4割を占める(2026年 年初来で40.5%。USDA 週次レポートの年初来集計より)。この分には売買価格がないため、公表される「米国の生体相場」は、価格が存在する残り6割の取引を集計したものになる。

どう値決めしたか — 契約形態の5類型

契約形態値決めの仕組み
相対交渉(Negotiated)売り手と買い手がロットごとにスポットで交渉。14日以内に受渡し
相対交渉フォーミュラ(Negotiated Formula)受渡しごとに価格算定式を取り決めるフォーミュラ型の取引
現物市場連動(Swine or Pork Market Formula)生体・豚肉・カットアウトなど現物市場の指標に連動する計算式
先物・その他市場連動(Other Market Formula)先物・オプションや、豚以外の市場(穀物等)に連動する計算式
その他契約(Other Purchase Arrangement)上記いずれでもない契約。長期固定価格、飼料コスト連動など

契約形態ごとの値決めを確かめるなら、HG201 の契約形態別の内訳を見る。

主流は現物市場連動フォーミュラ

最も多い組み合わせは「生産者販売(Producer Sold)× 現物市場連動フォーミュラ(Swine or Pork Market Formula)× 枝肉重量建て(Carcass basis)」(27.7%)。

独立生産者の販売分に限れば過半がこの形態で、公表された相場指標に連動して値決めされる。リスク分散のため、生体だけでなくカットアウト価格(豚肉側の指標)を計算式に組み込む契約も多い(→ 参考)。

相対交渉は1%未満だが、価格発見の起点

生産者販売(52.4%)の内訳

相対交渉 0.9% の価格が、現物市場連動などの計算式の基準として参照される

相対交渉 0.9%相対交渉フォーミュラ 0.1%現物市場連動 27.7%先物・その他市場連動 6.3%その他契約 17.4%
%は全と畜頭数比(2026年 年初来、週次レポート LM_HG214 の集計)。細い区分は見えるように少し太く描いている。

取引量はわずかでも、当事者が個別に交渉して値決めする唯一の形態であり、日々の需給を最も敏感に映す。フォーミュラ契約が基準にする外部参照価格(external reference price)の代表も、USDA が公表するこの相対交渉のベース価格である。

契約形態別のと畜頭数シェアの推移(2007年〜)

契約形態別のと畜頭数シェア推移(2007年〜2026年、週次の100%積み上げ)。パッカー自社保有豚が約24%から約40%へ増え、相対交渉は8%前後から1%未満へ縮小した
契約形態別のと畜頭数シェア推移(2007年〜、週次)。出典: USDA AMS 週次レポートを加工。

CME Lean Hog先物との関係

CME Lean Hog 先物の決済基準になる CME Lean Hog Index は、この生体相場レポート(前日と畜分)の正味価格から算出される。算出方法の詳細はCME Lean Hog のページで解説している。

役割は補完関係にある。先物の価格には、市場参加者の先行きの見通しと、価格変動リスクへの備え(ヘッジ)が織り込まれる。一方、USDA の現物相場は、足元の需給の中で実際に成立した取引の価格そのものになる。

先物で市場が先行きをどう見ているかを読み、現物相場で足元の実勢と先物価格との整合を確かめる——という使い分けで、どちらか一方では代わりにならない。現物側には契約形態・地域・品質の内訳という、先物にはない情報も残っている。満期には先物価格が現物指数(CME Lean Hog Index)に収れんするため、両者が離れたままになることもない。

参考 — 正味価格(net price)の算出プロセス

ベース価格に加減算される主な項目
赤身率背脂肪の厚さとロース深を測って算出する
重量帯決められた枝肉重量の帯から外れると値引き(sort loss)
枝肉以外の条件受渡しの時間帯など
契約の上乗せ契約で決めた一定額など

基準や幅はパッカーと生産者の間で取り決められていて、基本的に公開されていない。USDA が公表するのは平均と幅だけである。

ベース価格から正味価格まで
ドル/cwt(枝肉100ポンドあたり)・2026年10月8日と畜分
ベース価格
77.13
規格外れの値引き重量帯・ロットの揃い(sort loss)
−1.93
そのほかの加減算赤身率(背脂肪・ロース深)の評価、枝肉以外のプレミアム、契約の上乗せなど
+3.33
正味価格
78.53
ベース・正味値引き加算左端の 72 より下は省略
この区分の平均的な枝肉
頭数
227,321
枝肉重量
217.99 lb
背脂肪
0.65 in
ロース深
2.73 in
赤身率
56.15%

契約形態で加算の大きさが違うのは、主に豚の品質(赤身率)の差と、フォーミュラ契約などに入る契約の上乗せのため。この日の相対交渉は赤身率がほかより低く、加算も小さかった。

USDA AMS LM_HG201(2026年10月8日と畜分)。「そのほかの加減算」は 正味価格 − ベース価格 − 規格外れの値引き で計算した値で、USDA は内訳を公表していない。加減算の表はパッカーごとに違い、公開されていない。赤身率はパッカー各社の算出方法による値。

2026年10月8日と畜分では、生産者販売の加重平均でベース77.13ドル/cwt、正味78.53ドル/cwt だった。正味がいつも高いわけではなく、同じ日の相対交渉はベース77.44ドルに対して正味76.59ドルだった。

参考 — 契約形態ごとの値動き

契約形態ごとの正味価格を月平均で重ねると、相対交渉が最も大きく上下し、その他契約の値動きが最も小さい。前月からの変化の平均は、相対交渉 7.7ドル、現物市場連動 5.9ドル、その他市場連動 4.4ドル、その他契約 3.9ドル(2020年1月〜2026年10月)。

米国の生体豚価格(枝肉重量ベース、正味価格の月平均)を契約形態別に重ねた折れ線。2019年12月〜2026年10月。相対交渉が最も大きく上下し、2020年春と2023年末には他の契約形態より大きく下げ、2021年と2022年の夏には上回っている
ダッシュボード「生体価格」の「米国 生体豚価格(枝肉重量ベース) — 取引形態別」(月次・正味価格・全期間)。

相対交渉の豚は、契約で確保した豚とは別に、空いたと畜の枠を埋めるために買われる。枠が詰まると最初に買われなくなり、枠が空くと最後に戻る。このため値動きが最も大きく、工場の操業が止まった2020年5〜6月は、その他契約より30ドル以上安かった。

現物市場連動には、相対交渉の価格とカットアウトを式の中で混ぜる契約もある。カットアウトはパッカーの売値の目安なので、生体が高くカットアウトが安い局面のリスクは抑えられる一方、生体が安くカットアウトが高い局面で大きな利ざやを取る機会は一部失う。

その他契約には、価格の上限と下限を決めておく契約や、飼料の価格から豚の価格を決める契約が入る。USDA の規則で、こうした契約はこの区分に入ると決まっている。

この割合で足し合わせた額を払う
50%
読み込み中…
相対交渉(実際の月平均)この式で払った場合カットアウト × 90%
ドル/cwt。相対交渉の正味価格の月平均(USDA AMS LM_HG201)と枝肉カットアウトの月平均(LM_PK602)に、式を当てはめた計算値(2020年1月〜)。式の型は USDA に届け出られた契約の実例にならい、カットアウトの90%、上限と下限の値は例。

混同しやすい点

  • ✕「Carcass Base Price は枝肉の価格」

    枝肉が流通する段階の価格ではない。パッカーが農場から買い取る生体豚の代金を、枝肉重量あたりで値決めしたもの(豚肉側の卸売指標はカットアウト価格が存在する)。

  • ✕「生体相場は卸売市場のセリ価格」

    日本の食肉市場のようなセリで付いた価格ではない。公表対象は生産者とパッカーの直接取引(レポート名の Direct はこの意味)で、全国の相対・契約取引の法定報告を集計したもの。

  • ✕「公表される平均価格=米国の全と畜豚の平均」

    と畜頭数の約4割を占めるパッカー自社保有豚には取引価格が存在せず、価格集計の外にある。公表価格が映すのは、売買が成立した残り6割の実勢。なお「97%カバー」と矛盾するわけではない——97%は報告対象の広さで、自社保有豚も頭数・枝肉スペックは報告に含まれる。価格が報告されるのが売買のある6割、ということ。

まとめ

  • USDA豚生体相場は、法定報告制度(LMR)に基づく実取引の集計。米国内の豚の生産・販売の97%をカバーし、前日の取引が翌日には公表される。
  • 数字は「いつ・誰から仕入れた豚か・値決め方法・ベースか正味か・生体か枝肉か」の5軸で読む。実勢は枝肉重量建て・フォーミュラ連動が主流。
  • 相対交渉は取引の1%未満だが、フォーミュラの参照元として価格発見を担う。パッカー自社保有豚(約4割)には価格が存在しない。
  • CME Lean Hog 先物は先行きの見通しとヘッジを映し、USDA の現物相場は足元で実際に成立した実勢を示す。先物で方向を読み、現物で足元との整合を確かめる補完関係にある。

各数字は5つの軸の組み合わせで決まる

生体相場のレポートに価格がいくつも出てくるのは、同じ豚でも測り方や集計対象が違うためである。

①いつ測るか購買時点(Purchase)/ と畜・精算時点(Slaughter)
②誰から仕入れた豚か生産者販売(Producer Sold)/ パッカー間販売(Packer Sold)/ パッカー自社保有豚(Packer Owned)
③どう値決めしたか相対交渉/相対交渉フォーミュラ/現物市場連動/先物・その他市場連動/その他契約
④どこまで含む価格かベース価格(Base Price)/ 正味価格(Net Price)
⑤どの重量で割るか生体重量(Live basis)/ 枝肉重量(Carcass basis)

本記事で使ったデータは、以下のダッシュボードで確認できます。

関連用語
参考・出典

※ シェア・価格の実数は2026年7月時点の USDA 公表値(年初来シェアは2026-07-04週締めの週次レポート、価格例は2026-07-09と畜分)。