カットアウト価格
Cutout Value
USDA(米国農務省)が毎営業日公表する、米国豚肉相場の代表的な指標。端的にいうと「卸売カットの市場価格をもとに、規格差を補正して算出した部位本来の価値」。
何のための指標か
卸売カットの単純平均では、部位の価値の変化と取引の偏りが区別できない
USDA は日々、部位、骨の有無、整形度合いなどで細分化された卸売豚肉カットの取引価格を集計している。同じロースでも、規格によって歩留りが違い、加工コスト(人件費・包装)も違う。
ところが、これらを単純平均すると「部位としてのロースそのものの価値が動いた」のか、「その日たまたま低歩留り・高加工度のロース規格に取引が偏った」のかが区別できない。例えば脱骨・皮なし(ボンレス・スキンオフ)規格の取引が突出して多い日は、規格の加工コストが高いぶん卸売価格の平均は跳ね上がるが、それは部位としてのロースの実態を反映していない。
カットアウト価格は、規格による違いを取り除いて純粋な部位の価値を出す
カットアウト価格は、こうした取引品目構成の偏りによるノイズを取り除いて、部位の価値をプライマル単位で定点観測するための指標。プライマルとは、枝肉を大分割した直後の各パーツ(ロース・ハム・ベリーなど)に相当。
各規格固有の歩留り・標準労務費・皮脂構成をもとに、卸売カット価格からプライマルの理論価値を逆算する。これにより、日々の数字から「純粋な部位としての価値として動いた分」を読み取りやすくなり、長期の時系列比較や他指標とのスプレッド分析(生体相場との対比など)がしやすくなる。
どうやって算出するか
起点になるのは、パッカーが日々報告する規格別の販売価格。実際の加工は、ロースなどのプライマル(大分割)をより細かいカットへ仕上げていく流れだが、カットアウト価格はこれを逆向きにたどり、最終的に売られるカットの価格から加工の手間と歩留りを巻き戻して、プライマルの価値を逆算する。全体像は下の図のとおり(ロースを例に、枝肉カットアウトへ合成されるまで)。
落とす
切り分ける
Bone-In CC, Tender-In Loin
Sirloin
Blade Ends
Butt Tender
Trimmings
Bone①〜③で1つのプライマル(ロース)の価値が決まり、④で6プライマル+端材を枝肉歩留りで合成すると枝肉カットアウトになる。同じ手順がバット・ピクニック・ハムなど他のプライマルでも繰り返される。
6プライマルと枝肉構成
USDA が日次で公表する主要プライマルは次の6つ。枝肉に占める重量比(歩留り)が、枝肉カットアウトへ合成するときの加重になる。
| プライマル | 枝肉構成比 | おおよその日本側仕向け |
|---|---|---|
| ロース(Loin) | 25.23% | ロース・ヒレ |
| ハム(Ham) | 24.68% | モモ |
| ベリー(Belly) | 16.22% | バラ |
| ピクニック(Picnic) | 11.23% | ウデ |
| バット(Butt) | 10.03% | 肩ロース |
| スペアリブ(Sparerib) | 4.55% | スペアリブ |
残りはジョール(約1.5%)、ネックボーン(約1.9%)、前後脚・テール・カットロスなどの端材(合計約4.7%)で、これらを足すと枝肉構成の100%になる。日本側仕向けはおおよその対応で、規格・歩留りが異なるため単純な換算はできない。
枝肉カットアウトとパッカーの採算
枝肉カットアウト価格とは、いわば卸売豚肉の平均販売単価のこと
6プライマルを上の構成比で加重平均したものが枝肉カットアウト(コンポジット)。日本の枝肉相場のような、枝肉として流通する段階の取引価格ではなく、言い換えるなら卸売豚肉の平均販売単価を表す。パッカーにとっては、枝肉を各部位に加工・販売した場合に、平均してどの程度の売上単価を得られるかを示す目安になる。
生体価格との差(スプレッド)がパッカーの採算の目安
枝肉カットアウトは枝肉100ポンドあたりの価格で、枝肉ベースに換算した生体価格と直接比較しやすい。その差(カットアウト − 生体価格)をスプレッドと呼び、パッカーの採算の目安として業界でよく用いられる。
スプレッドには、と畜・大分割にかかる労務費や歩留りロスなどの加工費も含まれるが、加工費が大きく変わらなければ、スプレッドの増減は利益の増減を反映する(図)。







スプレッドの実際の推移と、スプレッドが縮んだときのパッカーの生産調整は、インサイト「カットアウト/生体スプレッド」を参照。
どこで取れるか
- USDA AMS の日次豚肉相場レポート(FOB 工場渡し、相対交渉 PM)のカットアウト・プライマル値セクション
- 公表は毎営業日 14:00(米国東部時間)頃の確定値
- 単位は USD/cwt(1 cwt = 100 lb ≒ 45.36 kg)。土日は報告がなく空く
報告の対象と限界
日々のカットアウトに入るのは、相対交渉・期近渡しの取引のみ
日々のカットアウトに入るのは、パッカーと買い手が価格を相対で決め、合意の翌日から数えて、箱詰め品は14日以内、コンボ(大型の箱にばら詰めした品)は10日以内に受け渡す取引だけ。受け渡しがそれより先の取引(先渡し)と、価格を相場などに連動させて決める取引(フォーミュラ)は、週次の別のレポートで公表される。輸出向けの取引も日々のカットアウトには入らず、週次の別のレポート(Export Sales)で公表される。
同じ流通規格名でも中身は異なり得る
パッカーは自社が出荷したカットを、USDA の流通規格のうち最も近いものに当てはめて報告する。同じ規格名で報告された品でも、実際の整形の仕方や仕様は、パッカーや取引先ごとに少しずつ異なる。カットアウトは、こうした違いを含んだまま、規格ごとの価格から計算されている。
よくある誤解
- ✕「カットアウト価格 = 枝肉のスポット価格」
枝肉自体の価格ではない。枝肉を部位ごとに売った場合の、1頭あたりの卸売価格の目安。
- ✕「Primal の価格 = 実際に取引されている商品の価格」
「ロース」という大分割そのものが、その価格で売買されているわけではない。実際に流通するのは、そこからさらに整形した個別カット。Primal の価格は、それらから逆算した計算上の評価額。
本記事で使ったデータは、以下のダッシュボードで確認できます。