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インサイト最終更新 2026-08-08

と畜頭数の先行指標:体重区分別在庫と母豚のと畜

米国の豚は生まれてから約6ヶ月で出荷体重(生体285ポンド=約130kg)に達する。今後半年のと畜頭数は、現在の豚の頭数と体重構成に左右される。その先の供給基盤は、繁殖豚の増減で見る。本記事では、飼養データのどの数字がどのくらい先のと畜頭数と対応するかを、短期(体重区分別の在庫)と中長期(母豚のと畜ペース)に分けて確認する。

半年先までの手掛かりは体重区分別在庫

米国の体重区分別 肥育豚在庫(四半期・積み上げ)
図1: 米国の体重区分別 肥育豚在庫(四半期調査)

米国の四半期飼養調査は、肉豚を体重4区分で数えている。出荷体重までの残り日数は体重からおおよそ決まるため、各区分の在庫は「〇ヶ月後に出荷される豚がいまどれだけいるか」を表す。

  • 180ポンド以上: 出荷まで概ね1ヶ月半以内
  • 120〜179ポンド: 1.5〜2.5ヶ月
  • 50〜119ポンド: 2.5〜4ヶ月
  • 50ポンド未満: 4〜6ヶ月

実際、各区分の在庫前年比と、その後のと畜頭数前年比を比較すると、相関が最も強くなる時期は出荷までの残り日数に沿ってずれる(2011〜2026年の四半期データ、以下同じ)。最も相関が強くなるのは、区分ごとに次の時期のと畜頭数になる(括弧内は相関係数)。

  • 180ポンド以上: 同じ四半期(0.73)
  • 120〜179ポンド: 1四半期後(0.87)
  • 50〜119ポンド: 1四半期後(0.89)
  • 50ポンド未満: 2四半期後(0.92)

以下の図は、この比較をダッシュボードのラグ分析で行ったもの。図中の系列Aは体重区分別の在庫(前年比)、系列Bはと畜頭数(前年比)。50ポンド未満の在庫は、2四半期ずらしたときに相関が最大になる。

50ポンド未満の在庫(前年比)とと畜頭数(前年比)の時間差ごとの相関。2四半期ずらしたときに相関が最大
図2: 50ポンド未満の在庫(前年比)を何四半期ずらすと、と畜頭数(前年比)と最も相関するか

次の2枚は、在庫の線を最も相関が強くなる分だけ後ろにスライドさせて、と畜頭数と重ねたもの。1枚目は50ポンド未満(2四半期スライド)、2枚目は120〜179ポンド(1四半期スライド)で、軽い区分ほど大きくずらしたときに線が重なる。

50ポンド未満の在庫(前年比)を2四半期後ろにずらして、と畜頭数(前年比)と重ねた比較
図3: 50ポンド未満の在庫を2四半期後ろにずらして、と畜頭数と並べたもの
120〜179ポンドの在庫(前年比)を1四半期後ろにずらして、と畜頭数(前年比)と重ねた比較
図4: 120〜179ポンドの在庫を1四半期後ろにずらして並べたもの

体重区分別在庫は、重い区分ほど近い時期、軽い区分ほど遠い時期のと畜見通しに対応する。繁殖豚の在庫は3四半期後以降で相関が高まり、それ以降は別の指標も必要になる。

母豚のと畜比率で読む繁殖基盤の方向

将来の子豚の供給源である繁殖豚の増減を測る指標として、米国の市場分析では母豚のと畜頭数を繁殖豚在庫で割った比率が広く使われている。と畜(淘汰)は繁殖群を減らす側の動きで、平常ペースを上回れば群は縮小に向かう。

母豚と畜頭数だけを見ると、繁殖群の縮小による頭数減と、淘汰ペースの変化が混ざる。このため、繁殖豚在庫で割った比率で見る。例えば、2025年の母豚と畜頭数は前年比−5%と大きく減ったが、在庫比では平常圏の12%台にとどまっていた。

繁殖豚在庫を8等分したバーの右端1目盛(12.5%)が当四半期に淘汰された母豚にあたり、それが母豚と畜比率の分子、バー全体が分母になることを示す図
図5: 母豚と畜比率の組み立て。分子は当四半期に淘汰された母豚、分母は繁殖豚在庫の全体。Gilt=未経産の雌豚
米国の母豚と畜比率(対繁殖豚在庫・四半期)の推移 2010〜2026年
図6: 母豚のと畜頭数 ÷ 繁殖豚在庫の四半期比率(2010〜2026年)

母豚は加齢で繁殖成績が落ちるため、通常期から成績の落ちた個体を淘汰し、若い後継雌豚に置き換える。この更新で在庫の5割前後が毎年入れ替わり、平均更新期間は約2年になる。したがって、母豚と畜の大半は定常更新分で、比率の絶対水準だけでは縮小を示さない。縮小・拡大の手掛かりは平常レンジからの乖離にあり、2010年以降の四半期比率は11.4〜13.7%、中心は12.5%前後。

  • 飼料が高騰した2011〜2012年と、生産者の赤字が続いた2024年上期に、13%台半ばまで上昇した
  • 2024年の高水準の後、繁殖豚在庫は前年比−1〜−3%の縮小が続き、2026年3月1日には589万頭と2014年以来の最小になった
  • 2026年上期は12%台前半まで低下し、在庫の縮小ペースも−1%台前半に緩んだ

この比率と繁殖豚在庫の前年比の相関は、1〜2四半期後で最も強くなる(相関係数−0.6)。繁殖豚在庫そのものは四半期調査でしか確認できないが、母豚のと畜は週次で公表されるため、調査を待たずに繁殖基盤の方向を追える。

目先のと畜頭数には、逆方向の影響が出る。淘汰された母豚自身がと畜頭数に加わるため、淘汰の加速は同時期〜1四半期後のと畜頭数をむしろ押し上げる。同じ指標でも、目先の頭数には増加要因、1年〜1年半先には減少要因として働く。周期的な拡大・縮小の仕組みは 用語集: ピッグサイクル。

なお、繁殖群を増やす手段は、未経産の若い雌豚(Gilt)を肉豚として出荷せず繁殖用に残すことだが、この動きは四半期調査でしか確認できない。母豚のと畜は週次で公表されるため、繁殖基盤を高頻度で追う指標として使いやすい。

繁殖基盤の縮小と豚肉供給減は必ずしも直結しない

繁殖基盤の方向は母豚のと畜比率からある程度読めるが、と畜頭数の予測まで踏み込むと精度は落ちる。原因は主に以下の2つ。

  • 生産性の向上: 1腹当たり頭数は2010年の9.6頭から2026年の11.9頭まで増え続けている。繁殖豚在庫が前年割れでも子豚生産が前年並みを保つ局面は多く、2024〜2026年もこの形になった(在庫−1〜−3%に対し、子豚生産は−0.5〜+1%)
  • 生体豚の輸入: 米国のと畜頭数には、カナダから輸入される豚が含まれる。離乳子豚を中心に月60万頭規模の流入があり、米国内の繁殖基盤だけでと畜頭数は決まらない
米国の繁殖豚在庫と子豚生産の前年比の重ね合わせ
図7: 繁殖豚在庫と子豚生産の前年比(四半期)

繁殖基盤の縮小は、将来の供給に減少圧力がかかりやすい状態を示すが、それだけで頭数の減少が決まるわけではない。子豚生産・分娩のデータと併せて確認する必要がある。また、本記事が扱ったのは頭数(供給の数量)までで、価格には需要側の要因が別に加わる。

まとめ

  • 体重区分別の在庫は、重い区分ほど近く、軽い区分ほど遠くのと畜頭数と相関する。半年先までの供給はここに表れる
  • 母豚のと畜÷繁殖豚在庫の比率は、繁殖基盤の方向を1〜2四半期先取りする。週次で追える点が実務上の利点
  • 繁殖基盤の縮小は、豚肉供給減と必ずしも直結しない。生産性の向上と生体輸入が間に挟まるため、子豚生産のデータと併せて読む

本記事で使ったデータは、以下のダッシュボードで確認できます(有料)。

出典: USDA NASS Quick Stats(飼養調査・と畜・子豚生産・母豚と畜)を加工。